今年もやってまいりました。正倉院展。
ハロウィンより正倉院展。
ジャク・オ・ランタンより御物(ぎょぶつ)を観覧したい私です。
※御物とは、皇室私有の品々とされる所蔵品のことです。
奈良の秋の風物詩と名高い正倉院展は、年に1回開催されて今回が74回目にあたります。
もともとの歴史的な話については、別ページ(「よみがえる正倉院宝物」のレポート)で触れていますので、よかったらご一覧ください。
奈良博が概要などを説明されたページもありますので、そちらもどうぞ→ 奈良博公式ページ
会期:2022年10月29日(土)~11月14日(月) ※会期中は無休です
開館時間:9:00~18:00(金土日祝は20:00まで)入館は各1時間前まで
今回も入館時間指定の予約チケットが必要です。
(ローソンチケット→Lコード:58885 ) または、ローチケ販売ページ
一般:2,000円
高校生、大学生:1,500円
小学生、中学生: 500円
※メンバー割引などは、別途ご確認くださいね
まず、出発前に予習をがっつりしておきたい私がしていることは、下記の2つです。
行ってからデバイスごとレンタルするのも良いのですが、ワイヤレスで耳の穴にがっちりねじ込んで一切の外界からの音をシャットアウトして正倉院にダイブしたい私としては、マイイヤホンが必須なのです。
という、『自分のイヤホンで聴ける』というメリットの他に、会期中いつでもどこでも聴けるので『予習・復習ができる』というメリットも大きくて、私はダウンロードしてすぐに一回聴き、会場で順番待ちの列でも聴きながら徐々に気持ちを奈良時代まで持って行っています。
たまに特別トラックで「この楽器で奏でた音楽はこんな感じ」的な曲も入っていて、めちゃくちゃ飛べます。
ちなみに、オーディオガイドのアプリは、去年のとは別の「IMuT いつでもミュージアム・トーク」というのに変わっています。(アプリダウンロードだと650円、会場でレンタルだと600円)
今年の声の人は、峰不二子であり堕姫である「沢城みゆき」さんです。
堕姫に「銀壺」って言われた時の、鬼が入ってそう感たるや・・・
ちなみに、個人的には「国家珍宝帳」の説明が不二子ちゃんから聴いている感じがして昂ぶりました。
ここからは完全に変態、いや偏愛的な話なのですが、可能な限り微に入り細に入り、かつ、効率的に鑑賞したいので、下記の2パターンでチェックします。
《軽め》 正倉院展のサイトでダイジェスト版をチェック → こちら
《しっかりめ》 出陳リストを見ながら、気になる宝物を宮内庁の正倉院宝物検索ページでチェック
宮内庁のサイトで、気になる出陳宝物の画像を愛で、添えられたキャプションで予習します。
今回はまず「銀壺」が気になったので、検索ページで「銀壺」と入力して検索すると「銀壺 乙」として出てくるのです。
そうなると、「え?甲もあるの?」と思いますよね?
そしたら、「銀壺 乙」に記載されている「南倉 13」という倉番を検索ページに入力してみると、ビンゴ!「銀壷 甲」(壷の字が違う)が出てきました。言うほど情報は増えませんが、少しの情報でも増えると嬉しいものです。
または、出陳リストの端に前回の出陳年が書かれているので、持っていたら図録のバックナンバーを見てみたり・・・(以前見ていたら何となく覚えているんですけどね)
あと、検索ページで素敵なのは、同じ倉番で”仲間”を見つけられるところです。
例えば、今回出陳されていた「白石鎮子 寅・卯」が「北倉 24」なので検索してみると、同類の白石鎮子がヒットして、青龍・白虎、玄武・朱雀のものや、他の干支のモチーフも全部鑑賞できるという・・・
あれ?そこまで沼は深くありませんか?
鎮子ということは重し?でも用途は不明。という感じの説明をデータベースで見ていたので、どんな物なんだろうって楽しみにしていました。大きさや質感、早く実物を見たい!と。
だって北倉でしょ?聖武天皇の身近にあった可能性が高いんだもの、それはもう気になります。
実物を見て、もしかしたら何かに嵌め込まれていたレリーフかも!と想像すると、この大理石の質感やモチーフの雰囲気が異国情緒にあふれていて素敵!という気持ちが増すのです。
寅と卯、隣の辰と巳が絡み合う姿が「え?どうなってるの?」って考えるのも楽しかったです。
データベースで見て想像していたのより、めちゃデカでした。その周りに様々な動物を狩りするシーンが描かれているのですが、脱力系の人物像やちょっと可愛らしさを感じるモチーフに笑みがこぼれながら、この壷は何に使われたんやろうって興味津々です。
恵美押勝の乱が終結した後に称徳天皇によって献納された品とのことで、その背景も気になります。
ヒノキの薄板に彩色されたという小さな飾り。これは、あまりにも可愛らしくて、単眼鏡で覗きながら「こんなブローチ欲しいなぁ」なんて思っていたら、ミュージアムショップにホンマにブローチが売ってて、即購入してしまうという・・・ この宝物は彩色が鮮やかに残っていて美しく、またそのブローチのサイズ感や再現性も素晴らしくて、本当に正倉院宝物を手に入れた気持ちになれました。
小さなナイフです。紙や木簡を切ったり削ったりする文房具として使われるのですが、飾りが凝っていてもう実に見事なのです。
しかも、無類の撥鏤(ばちる)好きな私としては、この美しすぎる鞘から目が離せない訳です。
どう思います?象牙ですよ?象牙をこんな風に染めるって、スゴくないですか?という逸品です。
お供え物を載せる台の、美しいことよ・・・ 特に足の暈繝(うんげん。グラデーションで立体感を出す技法)が見事でたまらんのです。こんな足のついたキャビネット欲しい・・・
お供え物を載せる台の上を飾っていたのだろうと思われる敷物なのですが、これがもうパッと見で度肝を抜かれるほどの美しさなのです。
鮮やかなストライプの暈繝グラデーションに様々な柄が織り出されていて、もうどこを見てもずっと見てられるぐらいのデザインにくらくらしました。奈良時代の美意識、最高!!
こんな柄のランチョンマット欲しい・・・
お経をまとめておくためのバインダー的なものなのですが、この竹ひごの細さったら、もうホントに・・・です。鮮やかに縁取られた染料がしっかり残っていて、草木染めの技術スゲー!って感動します。
こんなスゴい帙に巻かれていた経巻って何だったんだろう。
古文書が好きなんです。最後の古文書コーナーに、めちゃくちゃ長時間滞在します。
写経の精密な文字の並びを見ているのも好きだし、五月一日経だったら最後に光明皇后の署名があって、そこに「藤原氏光明子」って書いてあるのですが、その藤の字が特別だったりするのを見て萌えたりします。(特殊な”藤”の話はこちらの「杜家立成(とかりっせい)」のところで語っています)
でも本当に好きなのは公文書の方です。
公文書には字が書かれているところに各省や各地方の公式印が捺されていて、そのハンコが大好きなのです。フォントのデザインが震えるほど素敵で素敵で。
あと、当時の紙は貴重だったので裏紙がガンガン使われています。こちらの古文書は表面は隠岐国の決算報告書が書かれているのですが、裏面には「倶舎論」や「唯識論」や「瑜伽論」や「大般若経」などの文字が太く書かれていて、「え?なに、なに?誰かに貸し出した記録とか書いてあったりするのかしら?」などと気になったり・・・ 今回は出陳されていないのですが、思いっきり落書きしていたり、遅刻や休暇の届けがあったり・・・
奈良時代のお役人さんの仕事っぷりというか、本当にその時代を生きていた人の息づかいが感じられるような古文書にゾッコンなのです。
今回は、これの他にも戸籍を見ながら旧文字の数字を読み解いていました。楽しかったなぁ・・・
こんな風なので、私の宝物一覧はメモだらけです。
ちなみに、たいていの展覧会ではボールペンやシャーペンは使えません。
鉛筆だとOKだそうですので、鉛筆持参で行きましょうね。
長々とダラダラと語ったにもかかわらず、最後までお付き合いありがとうございました。
正倉院宝物って9,000件ぐらいあって、私たちが一回の正倉院展でお目にかかれるのは50~60程度です。
その中に、奈良時代の日本の職人が試行錯誤の上で作りあげたであろう品があったり、遙か遠くペルシャからまさに奇跡的に渡ってきたガラス製品があったり、当時のバリバリに進んだ外国文化を日本が一所懸命取り込んで吸収していく気配を感じて、なんだか日本の文化の産声が聞こえるような気がするんです。
これから先、あと30年見に行けたとして、1500点ぐらい?いや、ダブりもあるから、もっと少ないんでしょうね。
その中で、日本のロマンを感じられる品々と毎年出会えて、それでもお目にかかれないままの宝物もあるのかと思うと、なかなか感慨深いです。なので、必ず見に行きたいんですよね。
だから、今年も既に2回行きましたが、あともう1回ぐらいは図録を隅々まで読んでから、もろもろ確認萌えをしに行きたいと思います。
ホントにホントに、最後までお付き合いありがとうございました。