ホームページを見てみたら、直近の投稿が去年の正倉院展でした。
大変ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいましたか?
私は日々自分の至らなさに赤面しながらも元気にやっております。
今年の正倉院展まであと少し!となり、ウキウキとワクワクが止らないので
準備編と称して、勝手に注目している宝物のことを語ります。
その前に、正倉院の概要や楽しみ方を例年通り書いてまいりますので、
ご存じの場合は読み飛ばしてくださいね。
STEP4で注目宝物について語っています。
会期:2025年10月25日(土)~11月10日(月)
※会期中は無休です
開館時間:8:00~18:00(金土日祝は20:00まで)
入館は 閉館時間の60分前まで
※午前中~15時は混雑が予想されます
一般:2,000円
高校生、大学生:1,500円
小学生、中学生: 500円
奈良博公式ページはこちらです→ 奈良博公式ページ
私は下記2点を確実に実施しています。
会場で機材ごとレンタルするのも良いのですが、イヤホンを耳の穴にがっちりねじ込んで全ての周囲の音をキャンセリングし、正倉院の世界に埋没したい私としてはマイイヤホンが必須!
という、『自分のイヤホンで聴ける』というメリットの他に、会期中いつでもどこでも聴けるので『会場の外でも、予習・復習ができる』というメリットも大きく、私は家で前もってダウンロードしてすぐに一回聴き、会場で順番待ちの列でもオーディオガイドを聴きながら徐々に気持ちを奈良時代まで持って行っています。
オーディオガイドのアプリは、今年も去年同様「IMuT いつでもミュージアム・トーク」で、10月24日(会期前日)から12月中旬まで配信予定だそうです。ワクワク✨
ちなみに、価格はアプリも会場で機材レンタルの場合も同じ650円です。
(イヤホン忘れたら泣いちゃいますので気をつけましょう、私!)
ここからは完全にマニアックな話なのですが、可能な限り微に入り細に入り、かつ、効率的に鑑賞したい私は、下記の2パターンでチェックします。
《軽め》 正倉院展のサイトでダイジェスト版をチェック → こちら
《正直キモめ》 出陳リストを見ながら、気になる宝物を宮内庁の正倉院宝物検索ページでチェック。
気になる出陳宝物の画像を愛で、添えられたキャプションと複数の写真で予習します。
こうして、胸の高鳴りをおさえつつ、準備して臨む私なのです。
正倉院というのは、今は宮内庁の管轄ですが、
もともとは「東大寺の宝物庫」でした。
覚えていますか?
校倉造、ネズミ返し、などなどのキーワード。
そう、アレです!
(ちなみに近年の研究によると「校倉造が”呼吸して” 正倉院宝物を保存した」というのはガセネタらしいです)
その正倉院の誕生には、こんなお話があるのです。
743年、皆の力を合わせて大きな仏さんを造立しよう!と詔(みことのり)をあげられたのが聖武天皇です。
ちなみに、開眼供養は、譲位後なんです。
(歴史の試験で、よくはめられる落とし穴だったりします)
聖武太上天皇として法要に列席されたそうですが、「その時の天皇は?」と聞かれたら「孝謙天皇!」と元気よく答えましょう。
(ちなみに、聖武上皇はご病気で開眼法要に出られていないという説もありますが、参列されたと信じたい派の私です)
その東大寺・毘盧遮那仏プロジェクトの発起人である聖武上皇が崩御されて、奥さんの光明皇后は、
彼の遺愛の品々を見ていると、彼を思い出して辛い…
だから、彼と縁の深い大仏様に捧げます。
というようなコメントで締めくくられている目録(それ自体が正倉院宝物でもある「国家珍宝帳」。ちなみに、現存する最古の”和紙”でもあります。)と共に、650件あまりの品々をドドーンと寄進されたのです。
天平勝宝八歳(756年)6月21日だったと言われる、聖武天皇の四十九日法要でご冥福を祈って、ということでした。
国家珍宝帳の最後の一部分に、
「追感疇昔 触目崩摧」
(訳: 生前の様々な日々が思い出されて、心が砕かれる想いをしてしまう)
と書かれているんです。なんとも、ロマンティック。
そうして、650件もの太上天皇遺愛の宝物を受け取られた東大寺さんは相応の宝物庫が必要になりますよね。
はい!そうして作られたのが、正倉院なのです!!
(倉庫に院… なんと雅な… ウットリ)
その後もろもろ増えて、9,000件もの宝物が貯蔵されていました。 ”もろもろ”が多い…
もちろん、聖武天皇遺愛の品だけではなく、東大寺の法要で使われる大事な品々も含まれて、9,000件です。(東大寺の品々の例:毘盧遮那仏を開眼した筆、など)
ちなみに、ざっくり言うと
・北倉: 聖武天皇・光明皇后ゆかりの品々
・中倉: 東大寺の儀式関連の品々、あと薬物類(香木も)
・南倉: 仏具類(一時、東大寺の裁量で開け閉めされていた時代あり)
という構成になっています。
なので「今年は北倉から何点出陳されてるの?」というのが気になるところなのです。
実は正倉院宝物は「国宝」ではないんです。
え?ショボって思いました?
ウフフフフフ…
では、国宝の定義を見てみましょう。
① 国の宝
② 重要文化財のうち、特に文化史的・学術的価値の高いものとして文部科学大臣が指定した建造物・美術工芸品・古文書など。デジタル大辞林
②に注目してください。
国宝とは、”重要文化財”の中から、法的に(この場合は、文化財保護法によって)”文部科学大臣” が指定したものなんですよ。
一方、正倉院宝物は、大臣に指定されなくても、迷うことなく国の宝なんです。
国宝とは、根本的に性質が違うんですよ。
我々はそれを「御物(ぎょぶつ)」と呼びます。
吉沢亮さんは、私にとって「国宝」に出ていた ”御物級イケメン”な訳で…
ゴメンナサイ、またヤヤコシイ脱線しました。
ちなみに、東大寺献物帳(「国家珍宝帳」を含む献物リスト)に載っている宝物は「帳内御物」と呼ばれ北倉に収められていました。
北倉に収蔵されていた宝物たちは、この帳内御物を含むトップ・オブ・ザ 御物なんですよね。
なので、「今年は北倉から何点お出まし?」と気になるのです。
そして、さらに痺れるポイントが「勅封(ちょくふう)」であること。
正倉院の扉は勅使(天皇からの直々の使者)によって開封されるという、もはや儀式。
なので、気安く開け閉めできない重き扉な訳です。
それが1年に1度、厳かに開かれて私たちが拝観できるという…
そりゃ、もう行くしか無いですよね。
雅なニックネーム「蘭奢待(らんじゃたい)」で知られています。
ちなみに、この雅称は室町時代の終わり頃から使われるようになったそうです。
ものっすごい貴重な沈香の香木なんです。しかも大きい。
仏様に良い香りをお供えするためのものなのですが、あまりにも貴重で珍しくお供えされずに正倉院にしまわれていて、超絶有名になったそうです。(もっとちゃんとした理由がありそうやけど)
蘭奢待の 蘭には”東”、奢には”大”、待には”寺”、と、東大寺がその名に隠されているのも粋で素敵ですよね。
一度、その香りを聞いてみたいものです、、、
と思ったのは、私だけでは無く、それを実行した人たちがいます。
足利義政、織田信長、明治天皇などが、”蘭奢待をちょっと切って持って行った人”としても有名です。
天下人の中の天下人ですやん!
藤原道長・頼通親子も、ちょっと切ってると思うなぁ、、、(憶測)
ちなみに、切った人が付箋で貼られているのもご存じな人が多いはず。
でも、明治初期に取られた写真には、この付箋は貼られていない状態で写されていました。
・・・ということは、この後に切られた明治天皇はたぶん間違いないけど、織田信長や足利義政は違うところを切っていたのかも??
切った事実は信長公記などに載っているだろうから間違いないけど、どこをどれぐらい?というのは謎のままです。ロマンですねぇ。
先日の正倉院 the showで香りを試させてもらいましたが、少しスパイスの利いた甘い香りで「ほぉぉぉ、古めきしずかぁぁ」とつぶやくだけで精一杯でした。
お線香とかにしてもらえないかなぁ…
出ました!北倉!
聖武天皇が身近に置いておられたという6扇1セットの屏風なのですが、フルコンプで出陳されるのは50年以上ぶりだそうで、今から震えています。
ちなみに、書かれている内容は、
第一扇 : 主無獨治、臣有贊明
第二扇 : 箴規苟納、咎悔不生
第三扇 : 明王致化、務在得人
第四扇 : 任愚政亂、用哲民親
第五扇 : 近賢無過、親佞多惑
第六扇 : 見善則遷、終為聖德
一、主無獨治、臣有贊明
原文意味:君主は独りよがりで政治をしてはならず、臣下には君主を助けて正しく導く責任がある。
現代語訳:「君主は独断で政治をしてはならない。臣下はこれを補佐し、明智をもって助けるべきである。」
二、箴規苟納、咎悔不生
原文意味:忠告や戒めの言葉を誠実に受け入れれば、過ちや後悔は生じない。
現代語訳:「諫言(忠告)を素直に受け入れるなら、過ちも後悔も起こらない。」
三、明王致化、務在得人
原文意味:賢明な王が国をよく治めるためには、まず有能な人材を得ることに力を注ぐべきだ。
現代語訳:「賢明な王が政治を成功させるためには、良い人材を得ることが最も大切である。」
四、任愚政亂、用哲民親
原文意味:愚かな者に任せれば政治は乱れ、賢者を用いれば民は親しむ。
現代語訳:「愚か者に政務を任せれば国は乱れ、賢者を用いれば民は心を寄せる。」
五、近賢無過、親佞多惑
原文意味:賢人に近づけば過ちはなく、へつらう者(佞人)に親しめば迷いが多くなる。
現代語訳:「賢者を側に置けば誤りはないが、へつらい者を重んじると多くの迷いと過ちを招く。」
六、見善則遷、終為聖德
原文意味:善を見てはすぐに改めて実行すれば、ついには聖なる徳を備えた人となる。
現代語訳:「善いことを見たらすぐに学び取り実践すれば、最後には聖人のような徳を備える。」
まとめると:
この屏風は「良き政治と君臣のあり方」を説く内容で、唐代の儒教思想を背景にしています。六扇それぞれが四字句ずつ、計24字(または28字)ほどで構成され、「賢明な君主と忠臣の理想」を詩文的に表したものです。
これらに囲まれて毎日過ごしていたなんて、ものっすごいストイックな聖武天皇。
そういう思いも馳せながら、これらの屏風を拝観したいと思っています。
ほかにも、
「中倉からお出ましの遊び道具(投壷)って、造東大寺司の息抜きアイテム?」とか
「今回初出陳の本地経には糸藤があるのかしら」とか
もろもろ気になっているところ盛りだくさんです。
早く25日にならないかなぁ… ワクワク✨